最新の成果とお知らせ
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データベースの必要性
現在までに存在が確認されている化学物質は約7000万種類であり、年間数10万〜100万種オーダーで増え続けています。しかし理論的には存在し得るものの、いまだ人類が手にしていない化学物質種の数は、これをはるかに凌駕することが明らかになりつつあります。そこで本プロジェクトでは、まずこの革新をもたらす「埋蔵分子」を理論的に探索・発掘し、これらを供給する化学反応経路を、エネルギーや電子状態に関する物理化学パラメータとともにデータベース化します。そして研究・教育機関や一般から利用可能なウェブシステムを構築することを目的としています。データケミストリの視点から、自己発展型の異分野融合研究資源を創出し、物質科学に関する種々の問題解決のための情報資源を整備したいと考えています。(プロジェクトディレクター:佐藤寛子〔国立情報学研究所〕)
研究開発の概要
システムの要は、大規模データの効率的な検索・可視化と、データ発掘(化学反応経路探索)の効率化にあります。そこでまず必要な要素技術の抽出と今後の開発に向け、以下のような準備を行いました。
- データベース設計
- インタラクティビティ向上のための処理系の整備
- ウェブコミュニティ環境の開発を目的としたユーザのプライマリ利用シーンの抽出とインタラクションフローの構築
- データ登録・管理システムの設計と、化学反応経路探索を実施するGRRM (Global Reaction Route Map)プログラムの最新版との適合化
このシステム設計に沿って、理論的に探索される化学反応経路ネットワークデータを可視化する機能を開発します。具体的には、化学反応経路探索プログラムから出力される、テキストタイプの化学反応経路ネットワークデータを可視化します。そして探索結果を研究者が専門的な観点から解析できる、インタラクションデザインと実装を行います。また可視化にあたっては,検索アルゴリズムとの連携も鑑みながら、インタラクションデザインの観点から可視化ソフトウェアの設計を行います。
データベース開発の推進体制
本プロジェクトは、システム全体の設計を鑑みながら、まずはそれぞれの機能を1つずつ開発し、最終的にそれらを連結という流れで進めています。
共同研究者の所属研究機関:
国立情報学研究所、統計数理研究所、東北大学、量子化学探索研究所、京都大学、東京大学、京都産業大学、スイス連邦工科大学
新しい研究動向と展望について
専門的な観点から必要な機能を実装し、単体で動く可視化ソフトウェアを開発します。これによって、GRRMプログラムのユーザである化学反応解析の専門家に幅広く利用されることが期待されます。また利用者からのフィードバックを、今後専門外のユーザ向けの可視化ソフトウェア開発のための基盤づくりに活かすことも計画しています。
Research View 011
未探索の新物質をデスクトップで発掘しよう。
[データ中心ケミストリ]佐藤寛子(国立情報学研究所・准教授)