Science Report 041

ROISクロストーク2022
~IU-REALによる広がり・Network×Network~

当機構(ROIS)では、これまで10年以上にわたり、「若手研究者クロストーク」を継続的に開催してきました。近年は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響から、対面からオンラインでの開催となり、2021年度は若手に限らずベテランも含めた「ROIS若手+ベテラン異分野クロストーク」として実施、2022年度は一般社団法人大学共同利用研究教育アライアンス(IU-REAL)が創設したことに伴い、“~IU-REALによる広がり・Network×Network~”をキャッチフレーズに開催しました。

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ROISクロストーク2022 ~IU-REALによる広がり・Network×Network~

異分野融合と世代間交流の機会創出を目的に、研究者や総合研究大学院大学の学生を対象に機構の枠を越えて広く参加者を募るもので、新型コロナウイルス感染症拡大前までは合宿形式により深く議論を行う場を提供してきました。

未だコロナ禍ではありますが、移動制限等が無いタイミングであり、今回は対面でベストポスター賞の授与式を2月9日に開催し、藤井機構長ならびに戦略企画本部副本部長の工藤教授との懇談が図られました。

ベストポスター賞を受賞された3名の研究者との記念撮影。藤井機構長と工藤戦略企画本部副本部長との終始和やかな授賞式となった。

終始和やかな懇談の場となり、参加者からはクロストークに参加する意義として、他分野の研究者に自身の研究活動を知ってもらえること、新たな展開が期待されることや新鮮な気づきが得られるといったことに加え、クロストークが単年度のイベントとして終わることなく、その後の継続的な活動のフォローアップや次に繋がるワークショップなどの開催が欠かせず、それを期待することが確認されました。

今回のScience Reportでは、ベストポスター賞を受賞した3名の研究者とクロストークで発表されたスライドを紹介します。

近似的劣モジュラ性を用いた応用研究への展開には、課題を抱えている他分野の研究者との交流が欠かせないと藤井先生。藤戸先生より劣モジュラ性の進化研究への可能性を問われ、まずは組合せを見つける問題があれば相談して欲しいと藤井先生。劣モジュラ性はバイオインフォマティックスとの関連性が強いと説明。
その時代の気候や自然条件がどうなのか、それを特定するのがとても難しいと藤戸先生。過去の遺伝子変異の発生要因を探る上で、様々な自然現象の痕跡を探る必要があると感じ、昨年度に引き続きクロストークに参加。湖の泥土や貝殻、樹木の年輪、極地氷河から掘削・採取されたアイスコアに含まれる酸素同位体からもヒントが得られるだろうと藤井機構長。いかに異なる研究活動を組み合わせられるか、当機構の強みを発揮したいと語る。

ベストポスター賞 受賞者紹介

国立情報学研究所 情報学プリンシプル研究系 藤井海斗 助教
「機械学習における近似的劣モジュラ性」

ランチのメニューの組合せのように、「組合せ最適化」という分野では、沢山の組合せの候補からより良い組合せを見つけるアルゴリズムに劣モジュラ性が用いられます。
他方で最適化問題に劣モジュラ性を持たない場合、近似的劣モジュラ性を用いて近似保証を与えることが可能となり、これらは機械学習を効率化させる「能動学習」や「特徴選択」への応用が可能となります。藤井助教は、これらの応用を踏まえ、実社会での問題解決に幅広く適用できるよう研究を推進しています。

プロフィール

2015年東京大学工学部卒業。2020年東京大学大学院情報理工学系研究科数理情報学専攻 博士後期課程修了。2020年4月より国立情報学研究所助教。現在に至る。


国立遺伝学研究所 人類遺伝研究室 藤戸尚子 特任助教
「ヒトAPOBEC3 遺伝子調節領域にかかる平衡選択からみるウイルス感染爆発の痕跡」

SARS-CoV-2のパンデミックでは、東アジアの国々では欧米に比べて感染者や死亡者の数が少なく、この感染緩和の要因は「ファクターX」と呼ばれていましたが、その実態解明には至っていません。
藤戸特任助教はファクターXの候補として、APOBEC3遺伝子群に注目。その解明を進めるべく、COVID-19対応研究プロジェクト※の支援を受け、APOBEC3調節領域のハプロタイプとウイルスへの抵抗性との関係解明に向けた研究に取り組んでいます。ファクターXの解明に向けた研究を進める中、確認されたハプロタイプが関係した過去の感染爆発の様子が明らかになりつつあります。

※COVID-19対応研究プロジェクト:ROIS戦略企画本部が2020年度及び2021年度に緊急実施・機構内募集したプロジェクト。現在は「戦略的研究プロジェクト」に統合し、全国に応募を拡大している。新しい研究領域を生み出すような共同利用・共同研究の機会を、全国の研究者に提供することを目指した研究支援プログラム。
戦略的研究プロジェクトの募集について

プロフィール

2002年お茶の水女子大学理学部卒業。2012年東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻 博士後期課程修了。2011年度日本学術振興会特別研究員(DC1)。2013年総合研究大学院大学特別研究員。2018年University of California San Francisco Associate specialist、2020年 San Francisco State University Postdoctoral research fellow、2020年10月より国立遺伝学研究所特任助教。現在に至る。


高エネルギー加速器研究機構 加速器研究施設 大谷将士 助教
「小型ミューオン加速器による革新的イメージング技術の実現」

ミューオンは素粒子の一種で非常に高い透過力を持っています。この特徴を活かして、空から降り注ぐ宇宙線ミューオンによってピラミッドや火山、コンテナなどの透過イメージングに利用されています。しかし、宇宙線ミューオンは様々なエネルギー・方向で飛来するために必然的に得られる像がぼやけてしまいます。もし人工的に生成・加速したミューオンビームがあれば、単色のペンシルビームによって高分解能の透過画像を得ることができ、革新的なイメージング技術が実現します。
大谷助教は世界初のミューオン加速の原理実証に成功し、世界に類のないミューオン線形加速器の実現に着手しています。さらに橋梁や堤防・道路などの社会インフラの透過イメージングによる老朽化調査を目指し、持ち運び可能なミューオン加速器実現にむけて加速技術の小型化に取り組んでいます。

プロフィール

2007年京都大学理学部卒業。2012年京都大学大学院理学研究科博士課程物理学・宇宙物理学専攻 博士後期課程修了。2013年高エネルギー加速器研究機構素粒子原子核研究所 博士研究員、2017年より高エネルギー加速器研究機構 加速器研究施設助教。現在に至る。
2021年アジア太平洋物理学会連合(AAPPS)C.N. Yang Award。2019年度、2022年度卓越研究員候補者。

※写真撮影時のみマスクを外しています。
(文・写真:本部広報室 樋口 徹  公開日:2023/03/28)

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