プロジェクトの経緯

情報とシステムから捉える視点で、最先端研究のハブに。

「情報とシステム」という視点が可能にする融合研究

国立極地研究所、国立情報学研究所、統計数理研究所、国立遺伝学研究所の4研究所が結集して情報・システム研究機構が設置されたのは、2004(平成16)年のこと。その名の通り、地球・環境、生命、人間・社会などの複雑な現象を「情報とシステム」という視点から捉え、実践的な研究を行おうという、堀田凱樹初代機構長のビジョンから誕生したものでした。独自の領域研究で長い実績のある極地研と遺伝研、時代の要請に応える方法論を持った統数研と情報研という構成は、積極的な融合研究を実現する大きな可能性があります。そこで発足の翌年にあたる2005(平成17)年には、設立の理念を実現する機構直属の研究拠点「新領域融合センター」が設置されました。

新領域融合のシーズと人材育成の必要性

新領域融合センターを核とした新領域融合研究は、2010(平成22)年から第2期を迎え、特任研究員、リサーチアシスタントなどのメンバー約80名を有する一大プロジェクトに成長します。当初の研究計画は「地球・環境システム」「生命システム(のちに遺伝機能システムと改称)」「社会コミュニケーション」「統計数理基盤」「情報基盤」の5つ。ところが2011(平成23)年、わが国は未曾有の大惨事、東日本大震災に襲われます。これに応えて、同年着任した北川源四郎機構長のリーダーシップの下、翌2012(平成24)年には新プロジェクト「システムズ・レジリエンス」が加わりました。さらに新しい融合研究のテーマを継続的に発掘するため、若手研究者がシニア研究者とオープンな雰囲気で議論できる、合宿形式のイベント「若手クロストーク」も毎年開催。いろいろな大学・機関との共同研究を推進していくなかで、組織的に人材育成を行うスタイルも培われていきました。

データ中心科学の気運高まる、ビッグデータ時代

一方、ICTの発達と並んでその利活用への期待が増大するビッグデータ時代を迎え、共同研究・共同利用に資するアカデミックデータ整備への要請も、急速に高まっていきます。そこでリサーチコモンズに先立つ2007(平成19)年、まず生命科学や医療の統合データベース構築を目指す「ライフサイエンス統合データベースセンター(DBCLS)」を、機構内に設置。またデータ活用のための新しい方法論や解析技術は、分野や研究機関の枠を越えて広く応用でき、現実社会におけるさまざまな問題解決にも貢献できることから、その開発の重要性がますます認識されるようになっていきました。

三位一体の特徴をもつリサーチコモンズへ

2013(平成25)年、これまで取り組んできた研究事業を集大成するプロジェクトとして、「リサーチコモンズ事業」がスタートしました。データ基盤、モデリング・解析基盤、人材育成の「三位一体」という特徴をもつリサーチコモンズは、まずデータ基盤整備として、DBCLSに加え、「地球環境データ」「人間・社会データ」そして新規事業として「データ中心ケミストリ」という計4つのデータベースを採択。モデリング・解析基盤整備では、新領域融合研究を継承・発展させた「データ同化・シミュレーション支援技術(旧・統計数理基盤)」「e-サイエンス基盤技術(旧・情報基盤)」、そして「イメージデータ解析」「データマイニング」を推進しています。さらに第2期の新領域融合プロジェクトも引き継ぎ、データ中心科学推進のモデルケースとなるような研究開発が、日々続けられています。

(2014/04/01現在)